繁殖までの育成
しっかり飼い込んだ親魚を30~50匹程度準備します。
※親魚は30mm以上の個体でしかも老成していないものを選んでください。
※市販のMサイズ以上を購入し、2ヵ月程度飼い込めば親魚として準備完了です。集団繁殖という特性上、ある程度の数の親魚を飼育することになります。ここでは60cm水槽を使用しています。
繁殖水槽と採卵ケース
繁殖水槽は特別作らず、飼い込んだ親魚のいる60cm水槽をそのまま利用します。水草などのレイアウト素材は、あってもなくてもかまいませんが、ない方が水槽への採卵ケースの出し入れ等が容易になります。
採卵ケースは、浅底のケースに卵分離用のネット(鉢底ネットなど)を用意し、次のように取り付ければ完成です。
取り付け方法として、次のⓐⓑをご紹介します。
ⓐは採卵ケースの底面幅より少し広めに裁断した鉢底ネットをアーチ状に取り付ける方法です。
ⓑは採卵ケースの底面と同じサイズに断裁した鉢底ネットの裏に1~2cm程度の高さがあるおもりを付けて(固定して)沈める方法です。
ⓐⓑいずれも親魚が放卵した卵を効率よく集め、親魚と隔離できる方法であれば問題ありません。(当該実験ではⓐの方法を採用しています)これを適時飼育水槽の底床に並べます。
※今回は、27×12×H6cmのケースを3つ並べました(厳密に底を塞ごうとすると専用ケースでもない限り困難です。よって多少の隙間は気にせず緩い気持ちで並べましょう)。また、水槽の片側にケースを並べ、水草などを写真のように浮かべれば、ある程度(ほんとうにある程度ですが‥‥)産卵場所を誘導することも可能でしょう。
産卵
産卵は、成熟した飼い込み個体であれば、飼育者の気付かぬうちに日常的に行われていると思われます。
30~50匹程度の飼育数で20匹のメスが20日に1回の産卵をするとしましょう。1日1匹の産卵で卵の数が40~150個となるため(受精の調子が良く仮に受精率50%であったとすると)有精卵の発生数は20~70個/日となります。
逆に受精率がもっと悪く20%程度ならば、受精卵の数は8~30個/日となってしまうため孵化する稚魚の数も僅かです。いずれにせよ比較的歩留まりの悪いこの稚魚の飼育を続けるには、かなりのモチベーションが必要なことはいうまでもありません。
しかもせっかく採卵ケースをセットしても翌日に産卵が行われていなければ、かなりへこみますし、その空振りが数日間も続くようであれば、「本当に産むのか?」などと疑心暗鬼が募るばかりでモチベーションは低下し、もはや継続は不可能となるでしょう。
産卵誘発
そこで、ある程度まとめて採卵できるよう、少しだけ産卵誘発をしてみます。
方法はいたって簡単、水替えです。
この実験では、pH7.0で継続飼育中の親魚に、前日・当日は多めにエサを与え、昼過ぎにピート水で半分程度水替えを行ったためにpHは6.0付近まで下がりました。そして夕方、採卵セットを設置して消灯です。
※補足:pHショックを伴うおそれがあります。自己責任でお願いします。
産卵は基本的に早朝行われるため、翌朝に採卵ケースを取り出します。
現在もいろいろ試行錯誤を重ねておりますが、受精率は低く20~50%程度です。
それでも数匹が同時に卵を産めば、一度に多くの受精卵を手に入れることが可能でしょう。
卵はデリケートなので触らずに、採卵ケースのまま薄暗いところに放置して管理します。
※水温は湯煎などで管理しますが、暖かい時期に採卵すれば湯煎などでの保温は必要ありません(採卵ケース内にヒーターを投入し、エアーレーションを行った折に成績が下がったことを記憶しています)。
観察したい気持ちをグッとこらえ、照明を当てずにそっとしておきましょう。孵化までに要する時間は24時間程度なので、無精卵や親魚の糞なども気にせずにそのままでよいでしょう。早めに泳ぎ始めた稚魚の初期飼料は、前回のネオンテトラの繁殖と同じく、産卵と同時にばらまかれた無精卵などに発生したインフゾリアを充てることとします。
②5日~10日
この時期の育成方法は前回のネオンテトラの繁殖とほぼ同じです。このころから水槽の壁面や底面に静止がちだった稚魚に少しずつ遊泳力がついてきます。ここでの基本飼料は冷凍ワムシ、人工プランクトンを中心に与えます。後期には様子を見ながら生まれたてのブラインシュリンプも少しずつ与えていきます。
③10日以降
このころになるとブラインシュリンプも完全に食べられるようになるので、あとは水質の急変を避け、落ち着いた環境でじっくり飼育していくこととなります。
稚魚の飼育全般にいえるのですが、緩やかな水質の悪化には比較的強い反面、水替えなどによる水質の急変には弱いようで特に注意が必要です。
※カージナルテトラは、ネオンテトラにくらべて稚魚の成長が30~50%程度遅く、歩留まりは50~80%程度悪い印象です。
終わりに
およそここに記述した項目においても、本当に必要なことと、実は無駄なのでは?と感じることがたくさんあります。なかでも産卵誘発の項においては、自然界(原産地)では果たしてどうなのだろうか?と今でも疑問を感じずにはいられません。また、受精率の問題や、稚魚の歩留まりなどかなりの課題を残しています。